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一本杉通り かわら版

山下清展

ニュース・イベント | 2009年9月 5日

 秋の行楽シーズンだ!
 一本杉通り観光もこれから本番。といっても一本杉通りだけ目当てでは、なかなか来難いだろう。ただ他にも七尾で色々イベントがあり、それを観たついでにという手もあるから、今後はそういう情報も色々紹介したい。
 9月18日~11月15日には仲代達也が率いる無名塾による「マクベス」のロングラン公演がある
 また既に始まっているものでは、七尾美術館の「山下清展」(9月27日まで/会期中無休)がある。
 一本杉通りでも、10月10日から10月末まで、一本杉通りをギャリーに見立てて佐藤勝彦展(画家、書家、他にガラス器や陶器などへの描画など色々あり)を行う予定である。

 今回は、昨日私が見てきた山下清展を紹介したい。
観てきた感想だが、山下清は、天才には違いないが、‘天才’と一言で評するだけでは勿体ない凄さがあると思った。天賦の才能・素質を持って生まれてきたのは間違いなく事実。それを天真爛漫に表現して感性を磨き続け、多くの作品を残して若くして(49歳)で亡くなった人ということになろう。

 3歳の時にかかった重い消化不良の後遺症で、言語障害、軽度の知的障害を受けた事が、絵を描くということにおいては幸いして、純真になれたのが良かったのだと思う。12歳の時、養護施設「八幡学園」に入園して貼絵(ちぎり絵)と出会い、才能を開花。安井曾太郎など一部の画家などに評価されたがまだほとんど無名。それがまた幸いして自分の感性に徹底して素直になれ、筆ではなく、小さくちぎった色のついた紙の切片を貼るという根気の要る作業を繰り返して、自分の感性の表現することと独自の技法をさらに磨いていったのだと思う。
山下清展 ビラ表
 普通の知性のある人は、どうしても画家になるまでに知識として得た色々な概念や常識が、感性の自由な表現を邪魔することが多い。例えば金沢出身の鴨居玲などは、才能は十分にあるのだが、(自分を含めた)人間の内面の奥深くにあるものを描こうと、もがき続けて、酒に溺れたり自殺未遂を繰り返して、最終的に自殺するという壮絶な生涯を送っている。
 それと比べると山下清は、軽度の知的障害があったことが本人には返って幸せであったのかもしれない。 

 彼は、貼絵の他にも、フェルトペンによるペン画、水彩画、版画、油絵、陶器や皿絵まで手がけた。展示場の説明書にもあったが、彼の技法の中心は貼絵だと思う。他は援用、応用だ。油絵もあったが(勿論それなりに上手いが)、貼絵を基本とする彼には油絵具が乾くのが待ちきれず、彼には向いていなかったかもしれないという説明書にはなるほどと思った。

 放浪を始める少し前、彼の貼絵が何かの展覧会で展示され、先ほども書いたが安井曾太郎氏がその才能に驚愕し絶賛したそうだ。山下清氏の初期の絵は、何も安井氏のような高名な画家でなくとも、絵が好きな人なら誰でもわかるすばらしい感性の貼絵だ。素直さがそのまま出ていて非常に好感の持てるいい絵だ。

 放浪しては学園に戻りちぎり絵を作るという繰り返しがさらに腕を磨いたのだろう。
安井氏などがゴッホと比較して絶賛したせいもあり、彼は‘日本のゴッホ’とも評さるが、色使いなど似ているのは、ゴッホが逆に日本の浮世絵に多大な影響を受けていたせいもあるのではないかと思った。

山下清展 ビラ裏
 山下清の貼絵、つまり色のついた小さな切片で描くという技法は、ある意味印象派の点描に通じるものがあると思う。楊枝のような細さの細かい切片を用いてもいるが、ちぎり紙の素材を十分に理解した上で、それらの切片の組合せによる印象画を描くような技法で、それほど細かく描こうとは拘っていない。木々や山、家並みを、しぎり絵やフェルトの点描などで実に上手く描いている。
 また遠近法も結構用いており、構図がすばらしいのには驚いた。ところどころ遠近感を無視した人物や物の描写もあるが、普通の画家のような計算されたものが感じられないだけに返っていい。 

 例えば「長岡の花火」(貼絵)では、手前に描かれた人はある程度人らしく描かれているが、川岸に近づくに従って、人の頭が非常に小さなちぎり紙1枚あるいは2枚で描かれる。近寄ってみればとても人の頭とはいえないが、それを多数貼って画面を埋めることによって、非常に人の後頭に見えるのだ。花火も上手いし、川面に写った花火も上手い。信濃川を挟んで開かれている花火大会の構図も非常にいい。

 アメリカのライフ紙が、山下清の絵に驚嘆し、彼を捜索しだすと日本中も騒ぎとなり、彼は鹿児島県で保護され、放浪生活に終止符が打たれる。
 ただそれ以降、周囲が彼に色々なものを見せたり、色々なことを試みさせようとしたのだろう。彼は素直なのだろう。多少嫌な面はあったろうが、それらも受け入れて、最初にも言ったように貼絵の他にも、フェルトペンによるペン画、水彩画、版画、油絵、陶器や皿絵なども手がけるようになる。
 そして洋行の夢をもち、ヨーロッパ旅行を実現、さらに自分の作品の技量を上げていく。

 展示の作品は、140点と非常に多い。絵も間近で見れていい。私は近眼で乱視の上、最近は老眼なので、絵は顔を絵に10cm近くまで近づけて見たり、離れて見たりした。
 私は昨日昼2時すぎに会場の七尾美術館行ったが、閉館間際までいた。それでも早く見て周ったつもりだ。ビデオも見たかったが見る時間がなかった。じっくり鑑賞していたら1日はかかろう。
 一般800円だが、全然高くない、その価値から 考えれば他の作品展と比べる安過ぎるかもしれない。かなり長い記事になってしまったが、これも感動のなせる業だと思う。
 本当にお薦めですよ。

 



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